佐柚は立ち止まった。

しかし振り返らない。

声の主はわかっている。


「目立ちますよ」

「あたしに何の用?」

ため息混じりにそう言って、
佐柚は振り返った。


「偶然です」


口だけの笑みを浮かべてそう言った声の主は、

穴川栞だった。