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黒板にはずらずらと英文が並んでいる。
「それでは今日は3日なので…」
英語教師の中年の男が、教卓におかれた名簿に目を通す。
紗和がうしろの机にコツンとイスをぶつけた。
うしろの机でつっぷしている女子は,
ゆっくりと頭をおこす。
「3番の有末~」
教師は教室を見回して、佐柚の姿をとらえた。
「……」
「訳して下さい」
「わかりません」
「わからないか?じゃあこの文だけでいいです」
そう言って教師が指差した部分は…
“Have a hope”
「…希望をもて」
佐柚は小さな声で答えた。
紗和が安堵のため息をつく。
そんな紗和に佐柚は、
ありがとう、と小声でつけたした。
「そうですね。人生にはいろいろあります。ですが我々は希望を捨てたらいけないんです。回避の方法ではなく打開の方法を探さなくてはいけない…」
教師の雑談がだんだん耳からはなれていった。
片方の耳からひゅるひゅるとぬけていくようだ。
“希望”
考えるところは、たくさんあった。
佐柚はまた、眠りについた。
