大木は、携帯を片耳にあてながら、たばこをふかしていた。 管理人室はせまくて、書類や新聞、酒の缶でぐちゃぐちゃ。 部屋の中央にある古い黒のソファーが、大木の休息所であり寝床だった。 《あんたんとこの働き手だったとはな》 受話器の向こうの女は、驚いている。 大木は煙を吐き出した。 「世話んなったな」 女は笑った。 大木には、 この機械の向こうで、 女がニンマリとした不適な笑みを浮かべているのが安易に想像できた。 《あたしはあの子に惚れたよ。あんな綺麗な子は、初めてだ》