「悪かったと思ってる」
大木のガラガラ声が、低く部屋に響いた。
「あいつらにこの世界は関係ねぇ」
佐柚は驚いて大木を見た。
意地が悪く汚らしい大木が、謝っている。
耳を疑った。
「…は?」
「謝っとけ」
佐柚は鼻で笑う。
「…気持ち悪ぃ」
妙にしおらしい大木に、とまどっていた。
「坊主のあとは知らねぇよ」
「…ならいい」
佐柚は部屋を出ようと大木に背を向けた。
栞は、いつ、どのようにして“アリス”を見つけたのだろうか。
「お前みたいな奴がああいう坊主に近づくから、面倒なことが起こんだよ」
大木は吐き捨てるように言った。
「…っせぇよ」
佐柚もぼそっと吐き出して、部屋を出た。
