大木は立ち上がった。
新聞を乱暴に机に置いて、佐柚に歩み寄る。
「有末佐柚なんて奴は知らない。てめぇの話なんざしてねぇよ」
そして佐柚の目と鼻の先で立ち止まり、
佐柚の顎をくいっと持ち上げた。
「アリス」
佐柚は大木の右頬を、思い切り殴った。
大木はよろける。
「…てめぇ」
「失敗だよ…。お前が大地達にあたしのことを話したのも、あたしが大地にあたしのことを話したのも、全部失敗だ」
「へっ。泣きながら電話してきたくせによぉ。誰が迎えに行ってやったと思ってる?衣装も化粧品も、届けてやったのは誰だ?」
佐柚は目線を大木からそらす。
大木はニヤリと笑った。
「俺だ」
これには、佐柚は反論できなかった。
大地と功がホストの仕事をしていると聞き飛び出したあの日、
佐柚は大木を呼んだ。
意外にも大木は、2つ返事で佐柚を迎えに来てくれた。
そのおかげで、あまり時間をかけずに
-源氏-にたどり着けた。
何も言わない佐柚を横目で見て、大木は荒々しくため息をついた。
