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佐柚は部屋に入った。
スクールバッグを下ろす。
そして、慌ただしく隣の部屋にかけこんだ。
ボロボロの黒いソファに腰掛けて、煙草をくわえて新聞を読んでいる男がいた。
佐柚の声を確認すると、ため息と一緒に煙を吐き出した。
顔は上げない。
「つけられた」
佐柚は剣幕立って言った。
「…それは俺のせいじゃあねぇだろ」
佐柚は舌打ちする。
「大木てめぇ、また余計なこと言ってないだろうな」
大木は、ふっと鼻で笑った。
「何の話だ」
佐柚は、ぐしゃっと髪をかきあげた。
無性にイライラする。
あの、抑揚のない声が頭から離れない。
「大地達に余計なこと言ったろ」
大木は佐柚を見た。
新聞を閉じる。
「アリスのことを教えてやっただけだ」
