「1年にいんのは、穴川栞。3年に穴川由梨子っつぅバスケ部のマネージャーがいて、姉妹」
「ふぅん…」
真田が周りを少し気にしてから、少しかがんで声を小さくした。
「穴川姉妹どうかしたの?」
「下の子、どんな子?」
佐柚は真田の質問には答えず、逆に聞いた。
「穴川栞?1-Iのクラストップらしい。男子も女子も、近寄りがたいって噂になってんぞ」
「ふぅん…」
佐柚はまた曖昧に頷いた。
1-I。
大地と功の兄弟学級だ。
嫌な予感がした。
「だから、何!穴川姉妹どうしたんだよ?有末となんかあったの?」
「穴川栞に…なんかバイトのことバレた」
佐柚がやっと小声になった。
「は!?なんで、どっから!?」
真田があわてて、佐柚の両肩をゆする。
「多分、つけられた」
真田が、なんで…と言いかけたのを
「だから真田よろしくね!」
佐柚の元気な声が消した。
佐柚は真田の腕からぬけ、手を振る。
「は?」
「その子のこといろいろと!」
佐柚はそう言って、くるんと翻り走り去った。
「有末!」
どうしてこういつも、佐柚は人を振り回すのかと、真田は心の中でため息をついた。
教室に入ると、
聞き耳をたてていた男子達が、真田の周りに群がった。
