「ねぇ、1年に、メガネで黒髪で、雪女みたいな女いる?」
佐柚は4階に来ていた。
宮斗高校は、2階から順に3年・2年・1年、となっているのだ。
1-Bの教室の前で、真田は佐柚に呼び出されていた。
教室の中から好奇の視線が真田につきささる。
廊下を通っていく生徒たちも、アイドルの登場にそわそわしていた。
しかし佐柚はそんなことは少しも気にせず、真田にせまった。
「雪女ってお前…」
「小柄で、髪の毛こんなんなって…」
佐柚は、きょうは巻かずにおろしてきた長い髪を、肩のところで外側に折ってみせた。
「穴川かな…?」
「“ゆりこ”は?」
『由梨子は何に手こずってるのかなーって』
女子生徒はそう言っていた。
その名前に、真田は目を丸くした。
「それは穴川の姉貴だよ」
「姉貴?」
