紗和が息を飲んだ。
その場の空気が凍りついたのを、紗和は感じ取ってしまった。
ガシャァンッ!!
紗和がびくっと肩を震わせた。
佐柚が運動靴を下駄箱に放り込み、勢いよく閉めたのだ。
女子生徒は肩をすくめた。
「風俗嬢バカにすんのはあんたの勝手だけど、てめぇはそんくらい綺麗なのかよって話」
女子生徒のマフラーから白い息が漏れる。
「女は、なんだって?」
佐柚の冷たい声が、無表情で立ちすくむ女子生徒に刺さっていく。
「鏡みてもっかい言ってみろ」
佐柚はつま先でトントン整えて、紗和の腕をひいて階段に消えた。
残された女子生徒はふぅーっと長く息をはいて、口元だけで笑った。
佐柚の消えた階段に踵を返して、
昼前だというのに、昇降口を出て行った。
