「あたしは麗沙」

女は名乗った。

2階には部屋が2つあった。
ひとつはきっと、さっきの男達の部屋だろう。
ここのホストの楽屋は、地下にある。

「ここはあたしの店なんだよ」
麗沙はひとりだけ、華やかな椅子に座り、足を組んだ。

「荒らしてもらっちゃ困る」
佐柚を見た。
佐柚は肩をすくめて小さく頭を下げた。

「あんたたちも」
佐柚にかけた言葉よりも険しい声で、麗沙は大地と功に言った。

「この店に法律違反させるんじゃないよ。高校生は風俗店で働いちゃいけない」

その言葉は大地と功に向けられたものだが、麗沙は佐柚を見た。

「まあ…」

大地と功は頭を下げた。

「訳ありなら仕方ない」

その言葉に、2人は顔を上げた。
佐柚も驚いた表情をしている。

「今日までの給料はやる。警察にも渡さないし、学校にも何も言わないよ」

麗沙は立ち上がり、部屋の隅でたくさんの書類にまみれている机まで歩いていった。

綺麗な歩き方。

引き出しから、嘘でぬりかためられた2人の履歴書をひっぱりだす。

「でもあんた達には辞めてもらう」
言葉と同時に履歴書をびりびりに引き裂いた。

「すいませんでした」

2人は頭を下げた。

それから麗沙は、金庫のようなものを開け、封筒に入れもせず、紙テープで止められただけの札束を大地に投げてよこした。

「1週間しかなかったからな。でもうちは歩合制だから、おまけだよ」

「…いいんですか?」
「それから…」
功を無視して、麗沙は今度は佐柚に札束を投げた。