AL†CE!


______

佐柚の髪は、いつもより色の抜けた赤茶色だった。
胸の下ほどの長さで、縦に巻かれている。
赤いリップに派手なアイラッシュ。
仕事中とほとんど同じ化粧だ。


車が停まった。


「ここだ」

運転席の大木がガラガラ声で言った。
口には煙草がくわえられ、換気のために開けられた窓からは、賑やかな夜の街のガヤガヤが聞こえてきている。

佐柚はきらきらのストーンで全体を埋められた黒い鞄を拾い、ドアを開けた。

「帰れるな?」

佐柚の返事を聞く前に、大木は車を走らせて行ってしまった。


-源氏-とかかれた看板が、白く光っている。

辺りを見回すと、津川駅の路地と違って、クラブやパブ、キャバクラやホストばかりが立ち並んでいた。

華やかな佐柚に惹かれて、通行人が佐柚を振り返って通り過ぎていく。

佐柚はため息をついた。
そして深く息を吸って、源氏の扉を開けた。