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佐柚の髪は、いつもより色の抜けた赤茶色だった。
胸の下ほどの長さで、縦に巻かれている。
赤いリップに派手なアイラッシュ。
仕事中とほとんど同じ化粧だ。
車が停まった。
「ここだ」
運転席の大木がガラガラ声で言った。
口には煙草がくわえられ、換気のために開けられた窓からは、賑やかな夜の街のガヤガヤが聞こえてきている。
佐柚はきらきらのストーンで全体を埋められた黒い鞄を拾い、ドアを開けた。
「帰れるな?」
佐柚の返事を聞く前に、大木は車を走らせて行ってしまった。
-源氏-とかかれた看板が、白く光っている。
辺りを見回すと、津川駅の路地と違って、クラブやパブ、キャバクラやホストばかりが立ち並んでいた。
華やかな佐柚に惹かれて、通行人が佐柚を振り返って通り過ぎていく。
佐柚はため息をついた。
そして深く息を吸って、源氏の扉を開けた。
