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「きゃああん、もう、こうちゃん可愛い~」
きらびやかなシャンデリアが眩しく、あちこちで注がれる酒の匂いと、女達から漂う強い香水の匂いが鼻をつく。
大地と功は、仕事をしていた。
「はい、だいちゃん。もっと飲みなさいよぉ」
大地のグラスに、女の手で赤紫のワインが注がれた。
飲んだことのないワインを飲み続け、大地も功も、もう慣れてしまった。
「ありがと~♪」
『DAI』『KOH』と書かれた名刺が、テーブルの上に散乱している。
「ほら、結衣さん達も呑みましょ」
功は、子犬の笑顔で女達のグラスにワインをついでいく。
大地はその手つきに息をのんだ。
「やっぱり若い子はいいわねぇ」
女達はきゃあきゃあ騒いでいる。
今日でここでホストを始めてから1週間がたった。
新入り、そして若いということで毎日指名は絶えなかった。
他のホスト達によれば、どうやら大地も功も、“かっこいい”部類に入るそうだ。
初日に世話をしてくれた、安藤というオーナーの男は、大地と功が高校生だということを知らないらしかった。
こういう場に制服はまずいということで、武志が用意してくれた衣装を持ち歩き、それに身を包んでいたので、バレることもなかった。
大地は、佐柚のあのジャスミンの香りが、恋しかった。
