功が、家の目の前にいるというのにわざわざ携帯で呼んだので、家の中からまた人が出てきた。
「よぉ大地、どうしたお前らコソコソ」
ひょろっとしたシルエットの、佐藤家の次男、武志(たけし)だ。
「すいません」
大地は苦笑いした。
「なんかいいバイト教えてくんない?」
功の頼みに、武志は目を丸くした。
「部活やってんのにバイトもすんのか」
部活は確かに問題だった。
しかし、佐柚に協力するためにはそれしかなかった。
「夜さ俺達が部活おわってからできて、なるべく稼げるやつ」
ちょっと考えてから、武志は大地と功を交互に見た。
「夜、短時間でもがっぽり稼げる仕事、教えてやる」
功のような子犬の笑顔で、武志は笑う。
「さすがタケ!」
功がちゃかした。
「た~だし!」
大地と功は顔を見合わせる。
「母さんには内緒!」
大地と功、そして武志は、聖母マリア様に、しばらく隠し事をしなければならなくなった。
