やばい。
鼻の上がツンとしてきた。
必死でこらえた。

ちくしょう。
なんで俺が泣くんだ。
話したこともなかったじゃねぇか。

なんで俺がこんなに必死になって…

有末さんの切れ長の猫目が、俺をとらえている。
涙の溜まったその瞳に、俺は吸い込まれそうだった。

腕を放す。
代わりに、掌を差し出した。

有末さんの瞳から、
また大粒の涙が頬を伝った。

少しその掌を見つめてから、
彼女は俺の手に、白い小さな手を重ねた。

冷たかった。

温めたい。

“宗介”のあとを追って空に旅立ちたいなら、

“真田健太”がいるから地上にいたいと、

思わせたい。

俺が、生きる意味になる。