気づいたら、抱きしめていた。
抱きしめたというより、消えないように、捕まえたんだ。

「…死んじゃダメだ」

目を閉じた。
止めなきゃ。
消しちゃいけない。
このひとを、失くしちゃいけない…

風が冷たい。
有末さんの体も、冷たかった。

ゆっくり目を開ける。

泣いてるようだった。

慰め方なんて知らない。
ましてやこれから死のうって人との会話の仕方なんて、わからない。
けど俺は、
受け止めなきゃって思った。

「泣いていいから、生きて、泣いて」

強く抱きしめた。

そうしないと消えてしまいそうで、
こわかった。