それは怒鳴り声だった。 夜の病院に似つかわしくない荒い声。 絢華は何も言わなかった。 功は舌打ちをして、 自分の髪をぐちゃぐちゃにする。 元彼と事故にあった絢華にも、 絢華を事故にあわせた元彼にも、 苛立つことしかできない自分にも腹が立った。 絢華の視線は功をとらえた。 しかし功はその目を直視できなかった。 どこでもない、ただ一点を見つめる。 それでも、 虚ろな絢華の瞳から 涙が落ちたのには気がついた。