狐は困った顔をして見ていると、ある事に気付きました。

ウサギの通った後に、赤い染みができていたのです。

「ウサギさんウサギさん。 その染みはなんですか?」

「ああ、これは昨日お腹の空いたコウモリさんに血をあげたんだ。 でも困った事にそれから血が止まらなくて…」

「えっ?」



狐がよく理解できずにいると、 ウサギは思いついたかのように言いました。

「そうだ! まだ僕にはたった一つだけ君に優しくできる事があったんだ。 コレなら、君はお腹も空かないし寒くない!」

「えっと、あの……」

「待ってて、今すぐできるから」

「あ、はい」

狐が頷くとウサギはニッコリと笑って、自分の爪で腹を裂きました。

たちまちウサギの足元は血の海です。

でも、ウサギは満足そうにいいました。

「僕が死ねば、君は僕の肉でお腹が膨れる。 そして、食べ終わったあとの毛皮で温かいコートができる。 いい考えでしょ?」

「う、うぁああああぁあ!!」

「なんで怖がるの? さっきは頷いてくれたじゃないか。 ここまできてそれは無しだよ。 ほら、食べてよ。 ねえ……」