昔々、ある所に真っ黒なウサギがいました。

真っ黒なウサギはとっても人見知りのウサギで、森には友達が数人いる程度でした。

でも、ウサギは幸せでした。

何故なら、例え数人でも自分の周りに心から安心できる存在がいたからです。



ウサギの友達はカエルや鳥、はたまたコウモリまで個性豊かです。

しかし、彼らは皆ウサギの優しさに引かれていて、皆仲良くしていました。

そんなある日です。

森に、他の森から一匹の狐が迷いこみました。

森の動物達は皆、よそ者の狐を無視したり、嘘をついたりしてイジメました。

もう狐が心も身体もボロボロになってヨタヨタと歩いていると、木でできた家を見つけました。

表札には、こう書かれています。



『優しい白兎の家』



狐はワラにもすがる思いで、家の扉を叩きます。

「ああ、心優しく白いウサギさん、白いウサギさん。 どうかこの扉を開けてはくれないだろうか? 私はもう心も身体もヘトヘトだ。 一時でいい、どうか中で休ませておくれ」

すると、中からウサギが答えます。

「それは無理だよ狐さん。 もし開けたら、きっと僕は死んでしまう。 君に悪気がなくても、きっと僕は死んでしまう」

狐は、それでも扉を叩きます。

「ウサギさん、ウサギさん。 決して君を傷つけない。 決して君に嫌な思いはさせない。 だからどうか扉を開けておくれ」