「おっ!やっと気付いた!嬉しいねぇ」



そう言うと、藤の上に見えた影が、ぐわっと動いた。


いきなり大きくなった影は、周りの光に照らされながらすっと落ちてくる。



「危ない……!」



思わずそう叫んだけど、その影は、あまりにも静かに、ゆっくりとわたしの隣に降りてきた。



「危なくないんだよね、それが」



そう言うと、その影はにっこりと笑った。


いや、もう、影じゃないのかな……。



影だと思ったのは、わたしと同じくらいの背の男の子だった。


男の子って言っても、年齢もわたしと同じくらいに見える。



シルバーの短めの髪が、月に映える。

くりっとした丸い目に、細い体。

今時珍しく、着ているのは黒い浴衣のようなもの。



ストライプのように見えるグレーの幾何学的な模様が、髪と合っていて、古臭い印象はなかった。



浴衣と同じ色の帯に入った薄紫のラインも、少し可愛い。



ただ、はだけた胸元には、すこしドキッとする。



「あ、これ?本当はさ、俺もあんた達みたいな格好したいんだけど、紅姫が許してくれないんだよ」