「……キンモクセイが、お好きだったのですか?」


改めて部屋に戻った恵理夜に、春樹が問いかける。


「そうだった見たいね。懐かしい感じもするし。……もう、無くなってしまったけど」


亡くなってしまったけど――というようにも、聞き取れた。

恵理夜の眼は、澄んだ色をしているが、それは涙で曇ることの無い、悲しみの色だった。