部屋に戻って、いつもの草色のケープを身に着け、同色の鍔無し帽を被った。

 今日は前に注文した薬物が、ポクン・ポーラーに届く日なのだ。

 それを午前中に取りに行かねばならない。

「カイラム、ポクン・ポーラーに行くなら、こいつも買ってきておくれ」

 カイラムが支度を終え、部屋を出たところで、紅がメモを差し出した。

「はい、師匠」

 軽くメモに目を通す。

 また、いろいろと高価な品が書かれている。

 何に使うか、カイラムには理解不可能な物も多数あった。

 薬法師にとって薬物の収集は、一種趣味のような所がある。

 財布を預かる身にもなって欲しいなと思いつつ、リストの最後に斑潜魚の体液が載ってるのを見て少しは師匠も気を使ってるようだと気持ちが軽くなった。

「それじゃあ、行ってきます」

「はいな、いってきな」

 こうして、カイラムは紅の庵を出て、足取りも軽く買い物に出かけた。

 そうだ、今日は師匠にも肉まんをお土産に買ってきてあげよう。

 そう決めると、バクーの街へ駆け出した。

            END