倉庫が並ぶ路地を抜け、大きな通りを西へ、内陸側へ歩いていくと、市場に出る。

 地元向けの生鮮食品や生活雑貨の小売店が軒を並べる賑やかな下町の市場街だ。

 夕食の準備での賑わいが一段落し、市場は少し閑散としていた。

 それも束の間、じきに市場内の屋台で夕食を済ませようと別の客が集まって来るはずだ。

 屋台から漂ってくる食べ物の匂いが、カイラムの鼻腔をくすぐる。

 ぐるるとお腹が軽く鳴く。

「うーん、ここの肉まんって美味しいんだよなぁ。でも断食中に買い食いばれるとうるさいしなぁ。経済的余裕も作りたいし、でもなぁ……」

「ようカイラム、お使いかい、えらいねぇ。ほい、肉まん一個一〇平均通貨《ジード》でわけてあげるよ」

 顔馴染みの蒸かしまん屋台のおばちゃんが、ほかほかの肉まんを蒸籠から取り出し、カイラムに差し出した。

 そこまで言うならただでくれればいいのにと心の中で呟いて、つい一〇平均通貨《ジード》硬貨をポケットから取り出し、その肉まんを買ってしまった。

「まいどあり」

 ふかふかであつあつの肉まんを一口食べて歩き出した。