「うわっと」

 さすがにカイラムは、後ろへ下がって避けた。

「薬法師の弟子に手を出すと不幸になりますよ」

「知るか!」

 さらに連撃で叩き込んできた。

「何も本気でくることもないよな」

 全ての剣撃を避けていると、いつの間にか路地の壁際に追いつめられてしまった。

 背中に冷たい石壁が触れる。

 それを見計らって、男は青龍刀を大上段から思い切り振り下ろした。

 逃げ場のない斬撃が、カイラムの脳天に吸い込まれる。

 男は見た。

 青龍刀が、カイラムの正中線にそって、潜り込むのを。

 しかし、振り下ろした刀身は、硬い地面を叩いただけだった。

 カイラムは、にこにこ笑いながら男の目の前に立っていた。

 男は、いきなりの事で訳が判らなかった。

 悪夢でも見ているかの様だった。

 にこにこ笑ってるカイラムの額に、小さな裂け目が出来る。

 カイラムは、その裂け目を両手で摘んで一気に広げた。

 首まで……

「うわわぁーっ!」

 その下に蠢き、けらけら笑う赤黒い何かを見て、男は心の底から悲鳴を上げ凍り付いた。