はつこい

彼は窓の外に視線を戻し、
微笑みました。
すべてをつつんでしまうような、
優しい笑顔でした。


「恭介?」

笑いながら、
私の質問には答えず、
彼は尋ねてきました。


「うん」

私は答えながら、
彼の視線の先をみてみました。


体育館の入口。
髪が長くて、白くて手足の長い綺麗な女の人が、
男の人と談笑していました。


「あれ」

田野くんは優しく笑ったまま、
顎でそのふたりを指しました。


それだけで、
何となくすべてを想像し得ました。


「綺麗なひとだね」

私は思ったことを言いました。