私の足は、
自然に中学校に向かっていました。

田野くんたちと出会い、
3年間を過ごした場所。

市川杏美さんに出会い、
1年間同じ時を過ごした場所。


中学校のすぐ側にはバス停がありました。
生徒のほとんどが徒歩通学ですが、
地元のひとが多く乗り降りします。

そのバス停のベンチに人影がありました。

時刻はもう9時を過ぎていて、
周りにはあまり人がいないなかにただひとり、
誰かがベンチに腰をかけ、
たたずんでいました。


田野くんだったらいいなと思いました。



もう一度みて、
田野くんだと確信しました。

タバコを吸っているけれど。

無精髭を少し生やしてはいるけれど。



それは田野くんでした。


私のだいすきな、
優しい瞳をした田野くんでした。