そうして迎えた大学4年の夏休みのことでした。

8月に入り、ようやく内定をもらい、
卒業旅行に、卒論にと慌ただしく過ごしている頃、
市川杏美さんの五回忌が近づいてきていました。


それまで、
何となく避けていたのに、
ふと、思い出したのです。



市川杏美さんは、20歳で亡くなっている。
この大学を卒業してはいないのです。


私はもうすぐ22歳で、
この大学を卒業しようとしています。

それがなぜだか、
とても不思議に感じたのです。


それと同時に、
田野くんに会いたくてたまらなくなりました。