重たい荷物を抱えて
優美と二人で
家路につく。


「あれ、さっきーやない?」

「ホントだ
もう一人誰?」

「さぁ…」


こちらに向かって
歩いてきているのは
あたし達と
同じクラスの
さっきーこと崎本幸平。


「もう帰るん?」

さっきーは
あたし達に近づくと
声をかけてきた。


「うんっ」

「そっか☆
ばいばーい」

「「ばいばーい」」


もう一人の人は
何も喋らず
ただ通り過ぎただけ。


「あの人誰?」

「見た事ないわー」

「文系の人やない?」


文系とは授業が
一緒になる事がなく
関わる事がないため
知らない人が多かった。


「まぁいっか☆」


あたし達は
駅に向かって
他愛もない会話を
しながら
再び歩き出した。



「ばいばい優美」

「ばいばーい」

いつものように
優美と駅前で別れて
あたしは電車を待つ。


「茉莉ちゃーんっ!!」

「鈴香ちゃん!!
おつかれ~っ」

あたしのもとに
駆け寄ってきたのは
坪根鈴香だった。


「一緒帰ろー」


鈴香とは
小学校からずっと一緒で
あまり同じクラスに
なった事はないものの
気が合い、仲が良かった。


「中間やばいんよねー(笑)」

「あたしも(笑)
勉強せないけんね…」

「そーいえば
茉莉ちゃんさぁ
トーク行きよるんやろ?」

「たまーにね(笑)」

“トーク”は
家の近所にある
公共施設で
誰でも自由に使える
広場がある。
毎日多くの高校生が
勉強の場として
利用している。

あたしもその一人。
ごく最近
ちょろっと行ったくらい。


「受験終わるまで
トークで一緒に勉強せん?」


鈴香のこの一言から
あたしのトーク通いが
始まった。