「えっ…由希くん?」
私を抱きしめる力はどんどん強くなる。苦しいけど嬉しくて、切なかった。
肩に顔を埋められて、首に由希くんのサラサラした髪が触れてくすぐったくて…
耳元で、スンッと音がした。
「えっ…もしかして、泣いてるの?」
すると、くすっと意地悪な笑い声が聞こえた。
「俺が泣くはずないでしょう。先輩は何も、分かってない。」
そう言って、すっと由希くんが離れた。
暖かかった由希くんのぬくもりが離れて、一気に寂しくなる。
もっと、抱きしめていてほしい。そんなふうに思った。
「帰りましょうか。」
「あ…うん」
冷たい風がふいて、桜の木が寂しげに揺れた。

