「男は、剣を持ち、備えよ」

長老はそう言うと、結界の外で戦うティアナの方を見た。

「あの方は」

そんな長老のそばを、赤ん坊を抱えた母親が頭を下げて通り過ぎ、神殿の中に避難した。




「どうしました?スピードが落ちてきましたよ」

六本の手に翻弄され、ティアナは防戦一方にまわる。

「確かに、あなたは…人間にしては強い。だけどね」

ドキシは六本の腕を、三本づつ重ねると、ティアナの剣の側面を突き刺した。

「あなたは負ける」

「く」

ティアナは、土を削りながら、後ろに下がった。

「なぜならば…人間だからです」

2人の動きが止まった。

「少しくらいの強さで、私に勝てる訳がない」

「!?」

ティアナの剣が、砕けた。

元々…この数ヶ月、この剣一本で戦い続けてきた為、限界が近かったのであろう。

「その身だけでは、我々に傷一つつけられず、空も飛べない」

ドキシは空中に舞い上がると、突きだしている尻を曲げ、神殿を覆う結界に向けた。

「すべてが、最弱!」

尻から放たれた巨大な針は、結界に突き刺さり…破壊した。

「ああ…」

その様子を見て、絶望の声を出す人々。

「元から、生き続けることなどできないのですよ」

再び地上に、着地したドキシ。

「うん?」

その目に、倒れている戦士から、二本の剣を借りて、構えるティアナの姿が映った。

「何度でやっても…同じ」

とドキシが言った瞬間、彼の体に切り傷が走った。

「な、何!?」

いつのまにか、ティアナが自分の後ろにいた。

その事実を目にして、ドキシの全身が震え…針が突き出された。

神殿の回りでは、烏天狗の群れが、人々に襲いかかろうとしていた。

「待ちなさい!」

その行動を、ドキシが止めた。

「面白い!」

ドキシはゆっくりと振り向くと、ティアナに目をやった。

激しく息をしながらも、二本の剣で構え、自分を睨み付けるティアナに、笑みを送った。