「価値、ね。わたしたちは、あなたの血筋に価値を見出しているわけじゃないのよ」


先ほどまでとは変わり、優しく諭すように。

叔母の言葉は、隙間だらけの私の心にすんなりと入りこんできた。


「あなたがあなただから価値があって、大切だと思うの。
いえ、あなたはかけがえのない存在だから、価値なんてつけられないけれど」


ここには、私を必要としてくれる人たちがいる。

私の居場所は、ここにあるのかもしれない。

私がそう認めたなら彼らは、私に不自由を感じさせず、確実に幸せになれるような道をきっと用意してくれるのだろう。

けれど、私が帰るべき場所は、ここではない。



置いてきたものを、失ったものを取り戻すまでは。

そして裏切ってしまった人たちに、伝えるべき想いを告げるまでは。

安住できる巣など、作れないのだ。





その夜、私は夢をみた。

あたたかくて、優しくて、残酷なまでに切ない夢を。


それはこれから起こる、奇跡と言う名の偶然を予感させていたのかもしれない、なんて。

気づくはずもなかったけれど。