夕焼け色の再会


用意されていたアメニティグッズのフランス語をなんとか解読して、見つけたバスオイルを湯船に垂らす。

花の香りが湯気にのってふんわりと漂ってきて、今日一日で何度も崩れかけた心を少しだけ修復してくれた。





零れた涙は、意味のないものなんかじゃなかった。

けれどそれに意味をつけられるほど、私は自分の感情を理解していない。


私がいつだって確かなものを欲しがるのは、私自身が自分を確かな存在だと思えていないから。

存在する理由を探したがるのは、そうしなければここにいてもいいのだと誰も言ってくれないと思っているから。



こんなにも会いたいと思っているのは、もう二度と会えないことを知っているから。




静かな浴室に、くぐもった嗚咽だけが響く。

それでも誰も、抱きしめてくれない。

大丈夫だと、髪を撫でながら囁いてくれるだけでいいのに。


それさえも叶うことは、なかった。