「車を出して下さい。もう大丈夫です」


電話を切った後にそう告げて、私は今度こそ長谷川家へと向かった。



そこには、こんな私を待っていてくれる人がいる。

どんな意図があっても、ほんの一瞬だけでも、私を必要としてくれるなら。

私はどこへだって行けるはず。



そうたとえ、彼らにとっての私の価値が、長谷川家の血縁であるということだけだったとしても。




私はこうやって何度も、他人の好意を素直に受け取ることができないどころか、なんらかの考えで私を利用しようとしているとさえ思ってしまうことを繰り返してきた。


そしてそれさえも、私を必要としてくれるなら、と間違った自己犠牲心で、あえて傷つく道を選んだりしてこの身を差し出してきた。



かつては、そうあの頃は、そんなことをしなくても私を求めてくれる人がいたし、私もそう考えることはなかったのに。


私はもう変わってしまったのだろう。

悲しいことに、悪い方向へ。