目を開けても、奇跡は起こらない。 大きな墓石がそびえているだけ。 わかっている。 私のただひとつの望みが、決して叶うことがないことくらい。 わかりきっていても、落胆は隠せない。 自分の心は騙せない。 今の私はもう、あの頃のようにうまく強がることさえできないのだ。 私はとても強いからと、錯覚しつづけることも。 唐突に、母に会いたくなった。 東京から帰ったら、母のところにも行こう。 そして、その気配に優しく抱きしめられながら、この気持ちを吐きだしてしまいたい。 そう思った。