私のやり残したことは、この場所に別れを告げること。

悔やまないなどと誓うことはできない。

きっと私はこれから何度も悔い、自分を責め、過去に想いを馳せては泣いたりするのだろう。



それでも、ここで過ごした四年以上の日々は、決して嘘ではなかったと。

そう胸に刻み込めるだけで、乗り越えられる涙もあるだろう。




車からそっと降り立ち、青空とともに学園を視界に入れる。

全景を見ることは叶わない。

高く遠い空からは、きっと綺麗に見ることができるだろう。

自分の学び舎を、父も見つめているはずだ。

そしてその隣には、母が。



私はここに、夢を置いてきた。

もう、あの頃に戻れないことはわかっていても、感傷に浸ることくらいは許されるだろう。

失ったもののあまりの大きさに追いつけないままで、けれどもがきながらも私は今、ここにいる。



「本当に、幸せでした。もう戻っては来られないけど・・・・」


走馬灯のように蘇る思い出たちに、鼻の奥がつんと熱くなる。

けれど私はもうここには、涙の雫ひとつさえ残さないと決めたのだ。



「ありがとう、みんな」


小さく呟いて踵を返し、振り返らずにその場を去った。