沙織にいつも、休みの日くらい寝坊しててもいいのに、と言われているのだが。
 定休日。
 …やっぱり今日も、早起きしてしまった。
 昨日遅くまでみんなで宴会していたせいか、まだ誰も起きていない。

「おはよう、太郎」

 かろうじて起きてきた白猫の太郎に朝ご飯をやり、昨日の宴会の後片付けをやる。
 ついでに、リビングの掃除。

「おはよう、悠くん…もっとゆっくり寝ててもよかったのに…」

 目をこすりながら、沙織が起きてきた。

「おはよう。ごめん、起こした?」
「朝から掃除機ガーガーならしてたら誰でも起きるだろ」

 あからさまに不機嫌な様子の綾も起きてくる。

「あ、悪い」
「…ぜんぜん悪びれてねぇよな…」

 同じく不機嫌そうに、諒も起きてきた。

「いいじゃない、お掃除してくれてるんだから。それより、あなた達も少しは悠くん見習ったら?」

 沙織がフォローに入る。

「悠のは趣味の域だよなぁ」
「みゃあ〜」

 何故か太郎に話しかけている綾。

「よし、今日は私たち女の子がお掃除するから、悠くん自由時間」

 沙織の言葉を聞いて、綾は目を丸くした。
 確か今“私たち”“女の子”とか言ったか?

「…何、それ???」

 諒はすでに、この場を逃げ出している。

「別にいいんだよ、俺は…」

 悠は言った。
 本当に掃除や料理は、全く苦にならないのだ。
 綾の言うとおり、趣味と言ってもいいくらいだ。
 だが、沙織は譲らない。

「だぁ〜めっ! このままじゃ綾、お嫁にも行けなくなっちゃうよ? それでもいいの、悠くん?」
「…あ、いや、その」

 沙織の気迫に押され気味の悠。
 多分ここは、こっちが折れた方が丸く納まるだろうと、悠は思う。

(……嫁???)

 綾だけが、沙織が何を言っているのか、理解不可能らしい。

「とにかく、悠くん今日は自由時間。さぁ、出かけてこい!」

 何をそんなに燃えているのか、沙織は強引に悠を外へ放り出した。

「…ま、いいか」

 悠は軽くため息をつく。