悠も、ふらついてはいるが、何とか起き上がる。

「悠くん…?」
「よくやったね、沙織ちゃん」

 悠はそう言って、微かに微笑む。
 確かに落ちたはず…沙織は頭上のジェットコースターのレールを見上げた。
 陽子も気絶してはいるが、何処にも怪我はなく無事なようだった。
 陽子を包んでいたあの結界も消えている。
 だが、上を見上げると女は無表情のまま、こっちを見下ろしていた。
 そして、女は沙織に向かってすっと手をかざした。

「……っ!」

 沙織は思わず目を閉じる。
 その時、轟音とともに、女めがけて衝撃波が走る。
 それは女にもろに直撃した。

「まだ、だ」

 諒だった。
 その後ろから、綾も来ていた。
 女は諒に向かって攻撃する。
 が、悠の結界によって強力に守られていて、その力は通用しない。
 諒は容赦なく、その手から衝撃波を連続で放った。
 かなわないと思ったのか、女は目標を綾に変える。

「姑息な奴ぅ…一番か弱いあたしを狙うなんてっ!」

 もちろん、悠が結界で守ってくれているのはわかっている。
 綾は高く跳躍して、至近距離から攻撃する。
 綾のパワーも増していた。
 ダメージを受けた女の動きが一瞬止まる。

「諒っ! とどめっ!!」

 さっきまでとは明らかに違う、絶大なパワーの攻撃。
 一瞬恨めしい表情を残し、女は粉々に砕けて消えた。
 その戦いぶりを、沙織は呆然と眺めていた。
 …これが、みんなの戦い方…?

「よっ。無事か?」

 下手くそなウインクをしながら、綾が言った。

「うん、大丈夫。でも…」
「なに?」
「すごい連携プレーだね」

 はぁ? と首をかしげる綾。そして「すげぇのはどっちだよ」とボソッと呟く。

「陽子ちゃん、怪我してない?」

 悠が言った。
 見たところ外傷はないようだった。
 先程までのおぞましい表情とは打って変わって、今は穏やかな顔で眠っている。

「でもどうしてあの人、消えたの?」

 真顔で訪ねる沙織を見て、綾はくすくす笑った。
 かわりに悠が説明してくれる。

「陽子ちゃんを助けようとして飛び降りた沙織ちゃんは、一瞬だけ力を使えたんだよ」

 意味が分からずに、沙織は首を傾げた。