沙織の知っている陽子とは、まるで別人だった。
 顔色は青白く、やつれた感じがする。何か相当ひどい体験をしたかのように。

「どうしたの…まるで別人だよ…」

 見ているこっちまで悲しくなってくる。

「昔の綾みたいだな…」

 悠がそう呟いた。
 その時、ひときわ眩しい閃光が辺りを包む。

「…ちっ…」

 悠は舌打ちする。

「まさか、綾達…?」

 嫌な予感。

「…沙織…」

 陽子はこっちを見た。そして、手を伸ばす。

「沙織…私たち、友達、だよね…」

 沙織は思わず立ちすくんだ。
 陽子はすでに、尋常な顔つきをしてはいなかった。

「…あ…んなに、仲よかったでしょ…ね、一緒に…」
「陽子、何があったの? そんなになるまで…!」

 沙織は一歩、陽子に近づく。
 その時、悠は暗闇に目を凝らした。
 敵が、来る…!
 諒と綾は。まさか、さっきの激しい閃光で…。

「…友達、だ、よ…ね…」

 スパークする結界が、今にも爆発しそうな勢いで大きくなる。

『…鍵、か…』

 声がする。
 振り返ると女が宙に浮かんだまま、こっちを見ていた。
 その途端、沙織は全身が震える程の怒りに襲われた。

「あなた…許さない」

 女を睨み付ける。
 そんなことにはまるで無関心というように、女は悠に攻撃を仕掛けた。

「悠くん!」

 防御でなんとかしのいだが、ダメージもある程度受けたらしく、悠はその場に膝をついた。
 一方、陽子は今にも飛び降りそうに、足をレールの外に踏み出そうとしていた。

「た、た…す」

 助けて、と。
 一瞬、聞こえたような気がした。
 …そして、次の瞬間、陽子は飛び降りる…!

「陽子!」

 考えるよりも早く、沙織は陽子に飛び着いた。
 地上30メートルのジェットコースターのレールから、二人一緒になって落ちていく。

「沙織ちゃん!」

 次の瞬間、悠も下へ飛び降りた。
 その刹那。
 青い光が、一瞬だけ辺りを照らした。
 その瞬間だけ、真夜中の遊園地は真昼のような明るさになる。

☆☆☆

「……?」

 気が付くと、沙織は地面に座り込んでいた。