何故女が、計り知れないパワーを発揮出来るのか。

「綾!」

 悠がやっと観覧車から下に降りたばかりの綾を呼んだ。

「何とかこいつを止めてくれ!」

 綾は女に向かって攻撃する。
 女の集中が一瞬綾の方に逸れた隙に、悠はジェットコースターに向かって走り出す。

「了解。何とか、ね」

 綾はそう言って、再度女めがけて衝撃波を放った。
 予想通りかわされるが、その方向には諒がいる。
 諒は女が避ける方向を見切って、攻撃を仕掛けた。

「やったっ!」

 綾が言った。
 女は初めてダメージを受け、少し困惑の表情を浮かべた。
 そして、次の瞬間。
 綾と諒は、腹にまともに衝撃波をくらい、吹き飛ばされた。
 避ける間もなかった。
 地面に体が打ちつけられて、しばらく動けない。

「うそだろ…」

 這いつくばったまま、綾は目を見張った。
 何故、二人同時に攻撃を食らってしまったのか。
 見上げた空間には、全く同じ姿をした女が二人いる。

「大丈夫か?」

 痛みを堪えて起き上がり、諒が言った。

「大丈夫じゃないなんて言えないだろ…けど、見間違いじゃないよな、諒?」
「あぁ。分身するなんて…最悪、だな」

 腹の辺りを押さえながら、綾はそれでも何とか立ち上がる。

「パワー全開、死ぬ気でいくか」

 守りの悠がいない今、攻撃の一手に出るしかない。

「ほんとに死ぬなよ、綾」
「バカ、例えだよ、例え! 諒は右、あたしは左!」

 言いながら、綾は跳躍した。
 諒もそれに続く。