そして二人は女をめがけ、観覧車に登る。

「あまり深追いするな!」

 悠がそう叫んだが遅かった。
 次の瞬間、何かに弾かれたように綾がまっさかさまに下に落ちる。

「綾っ!」

 諒が叫ぶ。
 綾は落下中に何とか観覧車の鉄骨に掴まり、地面に激突する事だけは免れた。
 それに気を取られ、集中が乱れた隙に諒も女が放った衝撃波をまともに食らってしまう。
 今の攻撃の早さは、悠にも見えないほどだった。
 バカな…ありえない、と悠は愕然とする。
 自分達のパワーが落ちているのを差し引いても、こんな事があり得るはずはないのだ。
 ――同じ“種類”の存在なのに。
 そんな考えが、悠の頭をよぎった。
 敵のこの力は、一体どこから湧いているのか。

『なぜ、邪魔ばかりする』

 そこで初めて、女が観覧車の上から口を開いた。

「…決まっている、おまえ達はこの世界の人間を脅かす」

 悠が答える。
 女は薄く笑みを浮かべた。

『…人間は…破滅を望んでいる…』
「…そんなことはない」

 言い返す。
 だが女は相変わらず余裕の表情を浮かべ、笑っているだけ。

「…何が、言いたい…?」

 そんな女の態度に、悠は少し不安にかられた。
 綾と諒はまだ、動けずにいる。
 女はすっと動く。
 攻撃に備えて、悠は低く身構えた。
 だがその時、女が一瞬だけ視線を逸らす。
 悠はそれを見逃さなかった。
 女が視線を向けたその先には、ジェットコースターがある。

『…何故…愚かな人間に力を貸すのだ…!』
「力を貸してる訳じゃない、俺達がこの世界に関わること自体が不自然なんだよ!」

 悠は、女が放った衝撃破を防御壁で真正面から受け止めた。
 物凄い力。
 全身が痺れるような感覚に襲われる。
 だがその時、女はまた意識を一瞬だけジェットコースターの方へ向けた。

(何だ…?)

 ジェットコースターの一番高い場所。
 暗くてよく分からないが。

(人間?)

 防御壁に集中していて、少しでも気を抜くと女の力に押し潰される。
 だが錯覚ではない、ジェットコースターのレールの上に、確かに人が立っている。
 それを見た時、悠は気がついた。