その為、悠と諒は時折そうやって鋭気を養いにいくのだそうだ。

「この前は一ヶ月も帰ってこなかったよ」
「…じゃあ…」

 今回も、いつ帰ってくるのか分からないということなのか。
 沙織はそう考えて、不安を感じた。

「なんとか時間を稼がないといけないんだけど…いつまでも車で走ってる訳にはいかないからなぁ…」

 ハンドルを握りなおし、綾は言った。
 心なしか、いつもの綾の余裕が消えているように思えた。
 沙織にも緊張が走る。

「あまり店からは離れられないけどね…」

 離れてしまったら、諒達に今の状況が伝わらないような気がするのだそうだ。
 だから悠は出がけに、店からあまり出ないようにと言い残して行ったのか。

「これからどうやって乗り切るかなぁ…」

 綾は頭をポリポリと掻いた。
 さっきの綾の攻撃を、あの女はいとも簡単に防いだ。
 このまま時間稼ぎをしていても、悠と諒がいつ帰ってくるかも分からない。
 向こうの世界に帰った悠と諒が、こっちの状況をどれだけ把握できているのかも未知数だ。
 とりあえず、人気のない場所はどこかと、綾は沙織に聞いた。
 沙織は考えを巡らせる。

「灯台…」

 思いついたように、沙織は言った。