定休日。なのに、何やら朝から騒がしかった。
 もう少し寝ていたかったけれど、あまりの騒々しさにとても寝ていられる状況ではない。
 仕方なく、沙織はベッドから起き上がる。

「何してるの、朝から」

 パジャマのまま、沙織はリビングでぎゃあぎゃあと騒いでいる綾に言った。

「あ、沙織。おはよう」

 綾は沙織に気付くと、普通に挨拶をした。

「おはよ…って、何朝から騒いでるのよ?」
「…べつに…」

 どうやら怒っているのは、綾一人だけのようだった。
 悠と諒は、そんな綾を気にする様子もなく、二人揃ってコーヒーなぞを飲んでいる。

「お早う沙織ちゃん。今日、出かけてくるから」
「あ…うん、分かった」

 悠の言葉に、沙織は頷く。
 まさか、それだけで綾はあんなに怒っているのか?
 綾に視線を戻すと、こちらに背を向けて腕組みをし、不貞腐れている。

「綾は置いていくから。よろしく頼むよ」
「悠! 人をモノみてぇに言うなよな!」

 振り返ってまた怒鳴り付ける綾。
 だが悠は、やれやれというふうに肩をすくめた。

「…諒。もう行くか」

 完全に無視されている綾。
 そういえば、綾がこの二人と行動を共にしないのは、ここに一緒に住むようになってから初めて見たような気がする。

「あーそうかよ。もー知らん、勝手に行け!」

 綾はそう言い捨てて、それきり自分の部屋に閉じこもってしまう。
 それにしても、この怒りようは尋常ではないように思えた。

「ねぇ…どうして綾、あんなに怒ってるの?」
「俺達“本家”に用事があるんだ…今日は日がいいからね。だから、綾を連れて行く訳にはいかなくてね」

 出掛ける仕度をしながら、悠が言った。
 拗ねると機嫌が直るまで時間がかかるから、申し訳ないけど後は任せたよ、と言い残して、二人は出掛けて行った。

「任せたよ、って…」

 そう簡単に任せられても…と、沙織は困惑しながらも二人を見送る。
 そして、どうやってを宥めようかと少し悩んだ。
 ああいう状態の時の綾には、何と声をかければいいのか…。