「…沙織…!」

 間に合わなかったのか。
 いや、まだだ。
 まだ、諦めない。

「…一気に片付ける」

 同化した力で、綾は全身全霊をかけて攻撃を繰り出す。
 ――綾の姿に、悠と諒が重なったように見えた。
 女は綾のただならぬバワーを感じて、綾に向かって激しい攻撃を繰り出した。
 だがそれは、防御の壁によってことご弾かれた。
 そして剣は、女の胸をまっすぐに突き刺す。

「…ば…かな…」

 そんな言葉を残して、女は霧のように空中に飛散した。
 同時に綾も、地面に崩れ落ちる。
 しばらくそのまま、動けなかった。

『よくやったな、綾』

 いつもの調子で、ぽんぽん、と頭を撫でられる。
 …だが、そこに肉体はない。
 慣れ親しんだ気配は、だんだんと薄れていく。

「ばか…消えんな…」

 涙が地面に吸い込まれた。

「嫌だよ…あたしを残して行かないで…お願い…!」

 二人がいなくなる。
 そう考えただけで、息が出来ない。苦しい…!

『俺達はここにいる…もう一回立たなきゃダメだ、綾』

 悠の声。

『ここで倒れている場合じゃねえよ。大事な友達、だろ?』

 諒の声。

「……っ」

 綾は、地面に両手をついて、立ち上がった。
 そして、灯台に向かって、歩き出す。

☆☆☆

 …自分が生まれた訳。
 一樹の声に後押しされ、沙織はまた奥へと進む。
 始めは小さな点だった光が、徐々に大きくなって沙織の意識を包み込む。
 あまりの眩しさに、沙織は思わず目を閉じかけた。
 だがそこには、沙織が求めていた“真実”があった。

(…これが…私…)

 記憶を辿り、眠っていた力を呼び起こす。
 物凄い量のエネルギーが、体の中に入り込んできた。
 普通なら耐えきれない程の膨大な力。
 だが沙織には、それを許容するだけの器があった。

(そうか…これが、私…)

 これが、答え。
 沙織はゆっくりと目を閉じて、自分の身体を抱き締めた。
 何もかも、忘れていた。