「悠、あいつ、何をする気なんだ…?」

 女を睨み付けながら、綾は聞いた。

「沙織ちゃんの能力を、一樹を使って目覚めさせようとしてる。おそらく、あの女に力を注ぎ込んでいるのも一樹だ」

 今の相手の攻撃で、力の差は歴然としている。
 沙織の居場所と敵の目的が分かった以上、余計な体力の消耗は、避けなければならない。

「先に灯台へ行く」
「あぁ。任せた」

 短く会話を交わす。
 諒も、綾と一瞬だけ視線を絡ませた。
 軽く頷いて、綾は灯台へ向かう。
 すかさず女は綾に攻撃を仕掛けた。
 だが悠が防ぐ。
 諒も綾をフォローするように、女の行く手を阻んだ。

「沙織…!」

 綾は、必死で走る。
 ふらつく足で、それでも何とか灯台に近づこうとしたその時、背後でひときわ大きな閃光が走った。
 綾は一瞬、立ち止まる。だが、振り向かずにまた進んだ。
 次から次へと敵に注ぎ込まれる力の源を断ち切らなければ、この戦いには絶対に勝てない。
 ――それは、分かっている。
 今、自分が取った行動は、決して間違ってはいなかった筈。
 だが、さっきの閃光が背後で光った直後に――。

(うそだろ…!)

 綾は、それでも走るスピードを緩めなかった。
 どこにいても感じる仲間の気配。
 今はそれを、どこにも感じることは出来なかった。

(悠…諒!)

 かけがえのない仲間。

(居なくなったのかよ…っ!)

 信じたくはなかった。