女はにやりと笑う。

「そうだ…だがその力は、まだ未完成…」

 そこまで聞いて、悠は、あることに気付いた。

「まさか…一樹を使って無理矢理能力を開花させようと?」

 女は、ただ笑うだけだった。
 強力な能力者の近くにいると、眠っていた力が目覚めることがある。
 だがどうやって強制的に…?
 そこまで考えて、悠は一樹の能力を思い出す。
 一樹も、沙織と同じ能力の持ち主だとすれば。
 しかも、あれほど強力な結界を作り出すことが出来る力を、一樹は持っている。
 だが何故、そこまでして沙織が必要なのか。
 それほどまでに強い力だとでもいうのか。
 この気の流れ方からして、沙織があの灯台にいるのは間違いないようだ。

「軽く通してくれそうもないな…」

 悠は身構えた。
 攻撃はあまり得意分野じゃない。
 なんとか振り切ることが出来れば。
 ――沙織さえ、取り戻すことが出来れば。
 せめてこの女が身動き出来なくなるように、結界でも張ることが出来れば…!
 だが、悠が動くより一瞬早く、女が動いた。
 その手から閃光が幾重にも重なって矢のように飛んで来た。
 悠は何とか防御でしのぐ。
 だが、攻撃は連続していて、なかなかこちらから仕掛けることが出来ない。
 何とかしないと。
 港にいた美紀という女の子は、少しの間、自分達を足止めすると言っていた。
 あまり、時間はない筈だ。
 沙織の能力が、一樹の力によって強制的に目覚めさせられる前に。
 何とかそれまでに、灯台へ辿り着かなければ。
 悠は、女をに睨み付けた。