そして美紀に飛び掛かり、身動きが出来ないように羽交い締めにした。

「お前の気持ちは、よく分かるよ。だけとこんな事は間違ってる!」
「…うるさい…!」
「……っ!?」

 次の瞬間、綾の背中に物凄い衝撃が走る。
 思わず、手を放してその場に蹲る。
 息が詰まりそうになりながらも、綾は何が起きたのかと周りを見回す。

「…なっ…」

 綾は目を見張る。
 倉庫の中にある、あらゆる物が宙に浮いていた。

「まさか…!」

 それが、片っ端からこっちめがけて飛んで来る。
 何とか跳躍でかわすが、全部は避けきれない。
 綾の防御壁では防ぎきれなかった。
 美紀は、ムチャクチャに攻撃をし続けていた。

(ったく、聞く耳持たねぇな…でも、あと少しって…)

 もう少しで、丁度正午になる。
 一樹の企みは、まだ全く分からない。

(頼みの綱は悠か…)

 綾は、そんなことを思った。

☆☆☆

 悠は岬にある灯台に向かって走っていた。
 だんだんと、結界特有の重々しい空気が辺りを包んでいくようだった。

「……!」

 その時、目の前に一人の女が立ちふさがった。
 この女も、人間ではなかった。

「…彼の邪魔は、させない…」
「自分の邪魔は、だろ」

 悠は女の攻撃をかわす。
 さっきの男の比じゃない程の、強い力を感じる。
 間違いなく、今回の力の“中心”と思われた。
 綾が言っていた、一樹の傍にいた女だ。
 だが、この女が直々に出向いてきたということは、悠の推測もあながち外れてはいなかったということだ。

「それだけの力を持っていながら、何故人間に頼る?」

 悠は女に聞いた。
 一樹を操っているのは、この女なのだ。

「…奴等は、我々にない力を持っている。お前も感じていただろう?」

 女は言った。
 確かに、少し前から薄々は気付いていた。
 沙織の能力。
 初めは『空間を繋ぐ』力だとばかり思っていた。
 ――だが違う。

「…沙織は“あらゆるものをコントロール出来る”能力を持っている」

 眉をひそめて、悠は言った。