時間にしてみれば、かなり長い間、攻防が続いていた。
 そのせいか、いい加減動きも鈍ってくる。
 悠の姿が見えなくなっているのには、さっきから気付いていた。

「綾」

 お互いに間をとって対峙する。
 神経は相手の動きに集中させたまま、諒は綾を呼んだ。

「…あぁ。あいつら、悠の動きの方に気を取られてる」

 諒の言いたい事は分かっている。
 悠の姿が見えなくなってから、相手は少しずつ、集中が乱れてきているようだった。
 このチャンスを逃す手はない。
 防御の悠がいない今、攻撃の一手に出て相手を倒し、一刻も早く悠と合流する。
 諒は、一瞬だけ綾と視線を交わす。

「諒! デカいのまかせたっ!」

 綾は美紀が逃げ込んだ(誘い込んだ?)倉庫の中へ走って行った。

「なぁ! 戦うだけじゃなくて、少しは話し合おうよ!」

 倉庫に入るなり、綾は叫ぶ。
 美紀の攻撃のパターンは、大体読めてきた。
 恐らく念力のようなものを使い、あらゆる物に気を込めてこっちに投げつける。
 四方八方から飛んで来るので、余程集中しないと避けられない。
 それよりも気をつけなければいけないのは、さっきの雷のような衝撃波だった。
 攻撃を避けつつも、綾は何とか話をしようと試みる。

「今まで何をされてきたのか知らないけどな、自分が今何をしてるか、よく考えろっ!」
「うるさいっ! 何も知らないくせにっ!」
「じゃあ何でもっと早く話してくれなかったんだよ!」

 あれだけ仲良くしてたじゃねぇか、と言う綾の言葉に、美紀は一瞬、攻撃の手を止めた。

「だって…誰も信じてくれないじゃない!」

 誰も、信じてはくれない。
 …分かっている。
 誰にも相談出来なかったから、美紀はずっと悩んでいた。
 どうしてもっと早く気付いてやれなかったのか。
 今考えたら、美紀はいつも、一人だった。

「あと少しで、私の思い通りの世界になるんだから!」
「ならないっ!」

 綾は一気に間合いを詰める。