「は…ははっ」

 笑ってごまかす綾。

「もう、どうにもこうにも…」

 苦笑する綾と悠の間に、また敵が攻撃を仕掛けてきた。
 二人は跳躍でそれを避ける。

「ここでいつまでも手間取っている訳にもいかないんだがな」

 悠が言った。

「どうすんだよ?」
「長期戦は不利になるだけだ。早く決着をつけないと」
「あの子は…美紀はあたしが説得する」

 綾は上を見上げた。
 心に同じ傷を持つ彼女に、何としても考え直して欲しかった。
 また相手の攻撃をかわす。そこへ、諒が仕掛ける。

「考えてる暇ねェだろ!」
「あ、ごめん、諒。加勢する」

 綾は、諒の元へ急いだ。
 男は攻撃の手を休めることはない。
 悠はふと、上を見た。
 美紀が、こちらを見おろして、大きく両手を天にかざしている。
 その両手の先端に、一際大きな気が集まっていくのを、悠は見た。

「諒! 綾! 避けろっ!」

 悠が叫んだ。
 咄嗟に、綾と諒はその場を飛びのく。
 次の瞬間、雷のような閃光が轟音とともに辺りを包む。

「うっひゃ〜!」
「こんな力を持ってるのか…!」

 呆然と、諒が言った。
 だが悠はあることに気がつく。
 あの力…一瞬ため込んだ時、気の流れがある一方向から集中しているのが見えた。

「あっちは…」

 小さな灯台がある岬の方角。

「…足止め、失敗だな」

 悠はにやりと笑う。
 諒と綾は戦いに集中していて、今はとても自分の考えを伝えている暇はなさそうだった。

(仕方がない…)

 ここはこのまま、あの気の流れてきた灯台まで行ってみるしかない。
 そして、悠は気付かれないように、灯台に向かって走りだした。