だが、二人の男はまた、すぐに起き上がる。


「…チッ」

 舌打ち。
 また近づいてくる男達に、綾は一歩、後退る。
 今の“気”を込めた一撃をくらってもすぐに立ち上がるなんて、信じられない。

「ったく…時間がないっていうのにさ」

 結界の効力が弱まっているとはいえ、綾はもう体力を消耗しきっている。
 短期決戦にしようかと、渾身の力を込めたはずなのに。
 また掴みかかってくる男の腕をかわす。
 そうしているうちに、さすがに動きも鈍くなってくる。

「………!」

 一人に服を掴まれ、引き倒された。
 背中を激しく床に打ちつける。
 更に両腕を押さえ込まれ、身動きがとれない。

「放せよ…っ!」

 力一杯もがく。
 男は綾に向かってゆっくりと手を伸ばした。

(沙織…っ!)

 綾は目をつぶる。
 ――だが、次の瞬間。
 窓ガラスが割れ、綾を押さえ込んでいた男が弾き飛ぶ。

「このバカっ! てめぇ勝手なことばかりしてんなっ!!」

 綾は起き上がる。

「…バカって何だよ、諒」
「やかましい! バカにバカっつってどこが悪い!」

 言いながら、諒はもう一人に衝撃波を放つ。
 男は一撃で動けなくなった。
 綾は、ボロボロの服のほこりを払いながら諒を見た。

「…帰ってくるの、明日じゃなかったっけ…」

 言いかけて、黙る。
 延びてきた諒の腕が、綾を抱き締めた。

「…ホント、バカだろ…お前」
「…うるさいよ、諒」

 そう言いながら、綾は少し、目を閉じる。
 …暖かい。
 全身から力が抜ける。
 安心感と心地よさが、体を包み込む。

「も、もう分かったから…」

 綾は諒から離れる。
 泣くのを我慢するのは、これ以上は限界だから。
 そこへ、沙織と悠も部屋に入ってきた。

「間に合ったみたいだな、諒」

 ほっとしたように、悠が言った。

「綾! …その服…!」

 沙織が綾に駆け寄る。