自分では全く納得していない。
 だが、何がなんだか分からないうちに三人が沙織の家に居候するようになって、二週間が過ぎた。
 沙織は何度も、ここを貸してくれている老婆に電話をかけている。
 だけどどういう訳か、なかなか連絡がとれない。
 あの三人と老婆も、どうやら知り合いのようだった。
 どうしてもあの老婆に連絡をとって、あの三人を居候させる理由を聞かなくてはならない。

「またダメか…」

 何度かけても繋がらない受話器を見つめて、沙織はため息をついた。

「無駄だと思うけど〜?」

 諦めて後ろを振り向いた途端、綾に声をかけられる。
 …いつの間に、後ろに立っていたのか。

「あの婆さんも、色々と忙しいだろうし」

 壁にもたれかかり、綾は言った。

「…本当に知り合いみたいね。どんな関係か分からないけれど」
「い〜じゃん、い〜じゃん、そんなこと♪」

 綾は陽気にそう言うと、くるっと回れ右をする。

「さぁ〜て、あたしの部屋を整えるかぁ」

 とか言いながら、綾は勝手に自分の部屋と決め付けた空き部屋に入って行った。
 この家は何故か部屋数だけはたくさんあって、悠も諒も勝手に「自分の部屋」というものを決め付けて使っている。
 沙織は、腕組みをしながら部屋に入っていく綾の後ろ姿を睨み付けた。

「沙織ちゃ〜ん、なんだかたくさんお客さん来てるよ〜」

 店から悠の声が聞こえる。
 タダで居候も悪いから、店を手伝うのだそうだ。
 確かに、美形の二人がいてくれるおかげで、この一週間でだんだん客足が増えつつある。

「はぁ〜い…」

 沙織は仕方なく返事をする。
 実際、お客さんが増えるのは嬉しい。
 だけと沙織の料理の評判が上がった訳ではない。
 …何となく複雑な心境だった。
 しかも一応嫁入り前の娘(?)が、知らない男と一つ屋根の下暮らすことになるなんて、実家の親が知ったら泣くかも知れない。
 だがとにかく、沙織が厨房に立たないことには店は営業できないのだ。
 仕方ない、と沙織はエプロンをつけると、店に入った。
 小さな店いっぱいに、女子高生が溢れかえっている。