俺は今、仁川空港にいる。
アボジ(親父)から、韓国のガールズバンドをプロデュースしてみろと言われたのが、約1ヶ月前。
明日の7月5日に彼女達が新星MUSICと本契約するのだ。
だから、それに合わせて、韓国に来るように言われている。
空港ターミナルを通り、空港の外に出たら、そこには智盛ヒョンニム(ジソン兄さん)が待っていた。
ジソンヒョンニムは、俺の従兄だ。
親同士が姉弟なんだ。
去年、大学を卒業して新星MUSICに入社したのだ。
ゆくゆくは、韓国本社の副社長の椅子に座って貰おうと思っているんだ。
まぁ、今はペイペイだけどね!
「ジソンヒョンニム、オレガンマ 二ムニダ。
(ジソン兄さん、ご無沙汰しています。)」
『ヒョンニム(兄さん)って言うの止めろよ。
ヒョン(アニキ)で良いから。』
「つい癖で。
ヒョン、どうしてヒョンが迎えに?」
『これが下っぱの仕事。
身内とかは関係無く、ビシビシ鍛えて貰ってるよ。
いつかは重役の椅子に座る事になると思うけど、今は現場がメチャクチャ楽しいよ!
覚えなきゃいけない事も沢山有るし、人脈も築かなきゃ。
まぁ、チャンスが社長に就任した時には、俺がサポートするつもりだから、これからも宜しくな!』
「なんか、ヒョンにそう言われると、何か照れちゃうよ!」
『とにかく、社長がお待ちだから、急いで行こうぜ!
これが、俺専用に会社が用意してくれてる車。
現代(ヒュンダイ)の最新セダンだぜ!
新入社員に、こんな高価な車を渡して、大丈夫なのか!?
まぁ、社長も気に掛けてくれてるんだろうけど、他の新入社員の目が痛いぜ!』
「気にしなくて良いんじや無いですか!?
アボジにも、思惑があってそうしてると思いますよ。
ところで最近、本社の芸能部門はどうですか!?
一度に女性歌手グループを、何組も同時にデビューさせていたけど、上手くいってますか!?」
『とにかく大変だったよ!
統括マネージャーや現場マネージャーは、タレント以上に忙しくて、寝る間が無いんだから。
途中で、倒れてしまう新人マネージャーも居たくらいだよ。』
「そりゃ大変だったんですね。」
『だから、今年入って来た新入社員の何人かは、辞めてしまったよ!』
「軟弱ですね。」